182話 刻石流水
【清掃】
今年から学習塾の講師として勤務することになったSさん。授業が終わると、生徒たちが使った机の上の消しゴムのカスを先輩講師と一緒に清掃します。
教室の清掃に取り組むようになって半年が経過した頃、<机の後始末くらい自分でしてほしい>と、生徒を責めるような気持ちが出てきました。
その気持ちを先輩講師に伝えたところ、「生徒のことを言うけれど、S先生自身はどうなのですか」と問われたのです。
何のことだろうと尋ねてみると、「S先生の授業後のホワイトボードの黒ずみやカスを、事務のYさんが清掃しているんだよ」と言われたのです。
自分自身の後始末ができていないことを指摘され、恥ずかしさと共に猛反省したSさん。生徒を責めるような気持ちが出てきた時には、まず自らを振り返ってみようと心を改めたのでした。
今では、授業後の清掃をする際に<生徒たちは、真剣に勉強しているのだな>と大らかに受け止められるようになったのです。
今日の実践
刻石流水(こくせきりゅうすい)
「受けた恩義はどんな小さくても心の石に刻み、施したことは水に流す」こと
人から受けた恩は、その人に返すのみならず、より多くのひとに施すこと。そして自分が施したことは、その瞬間に忘れること。
私は月に数回、山形市七日町の屋台村にある【小太郎】さんという山形牛のお店でお手伝いをすることがあります。
お酒が入りますと心根が出るもので、仕事中こんな言葉が耳に入ってきます「◯◯の為にこれだけやったのに」「会社のために身を粉にして〜」などなど。
皆さま、日々の仕事に真剣に取り組んでいらっしゃり少しでも美味しいお酒と食べ物でスッキリしてほしいなと思いながら働いています。
そんな聞こえてくる世間話は「相手への」「かけた施し」が多いですね。
刻石流水
かけた「施し」の話を、受けた「恩」の話に変えたらハッピーな世の中が広がるんじゃないかなと感じます。
ひとり自分と向き合って思考を変えるのはなかなか難儀なことです。であれば、周りの仲間の力を借りて明日をみんなで作って行くのもいいのではないでしょうか?
今日も一日お疲れ様でした!
