232話 わびさびと不完全
【わびさびと不完全】
十三夜は「後の月」と呼ばれ、十五夜の約一ヶ月後に巡ってきます。十五夜は中国から伝わってきた風習ですが、十三夜は日本固有の風習です。
その由来は諸説あり、平安時代の宇多(うだ)天皇が愛でたのが始まりだという説や、稲の収穫を終える頃に当たることから収穫祭の一つだったのではないかという説などがあります。
夏の暑さが残っていて雨の多い十五夜よりも十三夜の頃は晴れることが多いため「十三夜に曇りなし」とも言われています。
また、十五夜だけを愛でるのは「片見月(かたみつき)」と呼ばれ縁起がよくないため、十五夜にお月見をした時には十三夜にも必ずお月見をするものとされていました。
昔の人は完全な姿の満月だけでなく、満月が少しだけ欠けた十三夜の月に趣を感じていたようです。
日本人には、不完全なものに美しさを見出す美意識があります。そうした価値を見出だし、良しとする「侘(わび)」「寂(さび)」の精神で月を愛でたいものです。
さて今日の学びは?
「わび」「さび」は日本的な美意識を代表する言葉だと思います。
さびは「錆び」と書き、古びた様子を指します。では、「わび」=「侘び」とは何でしょうか?
今日は千利休が大成した「侘び茶」の精神を考えます。
千利休
16世紀に織田信長・豊臣秀吉に仕え、茶の湯を完成させます。現代茶道の主な流派の祖であり、豊臣政権時代、人事にも影響力を持った人物です。最後は主人である秀吉の怒りを買い切腹させられます。
そんな利休が説く【侘び】とは
「侘び」とは本来は「心細いこと」「辛いこと」を指す言葉ですが、利休は格の高い道具など一つも持たず修行の深い覚悟、茶の作法を工夫することが「侘び」であると。
利休は茶道具にも、何気ない日用品を見立てて使ったり、誰も気づかなかった物の美を見つけたりと、侘び茶にふさわしい美を探求します。
例えば、従来の常識を破り形の歪んだ「樂茶碗」を考案したりしています。
不均衡だからこそ美しい。
先人たちは不完全の中に美を見出してきたんですね。
不完全と言えば、日光の陽明門にみられるように、建物の完全すぎるのを恐れて柱の1本だけを上下逆にしておく【逆柱】という材木の根もとを上にして立てた柱があります。
これも不完全が形に残っているものでしょう。
私たちの暮らしの中には、わびさびの美や不完全なモノがたくさんあります。普段目にしているものを違った視点で見てみると、面白い発見があるものですね!
今日も一日お疲れ様でした!